
タイトルからは内容が想像できず、「塚地さん主演だし面白そうかな」と気軽に見始めた作品でしたが、「梅切らぬ馬鹿」の意味を知り、「あぁそうか」としみじみと思った良作をご紹介します。
塚地さん演じる自閉症を抱えた主人公「忠さん」と、その生活を献身的に支える母(加賀まりこさん)の近所に、とある家族が引っ越してきたことで、ちょっとした事件が起こる、という「とある日常」の一場面を切り取ったような作品です。
自閉症に対しては以前に比べ理解のある人が増えた一方、そういった方々に対して地域社会がどう向き合うべきなのか、についてはおそらくまだまだ課題があると思いますが、本作にはそういった場面がダイレクトに描かれていました。
決して「イイハナシだな」「みんなハッピー」みたいな描かれ方ではなく、それぞれの立場の苦悩がしっかりと出ていて、そういった意味でのリアルさがある作品だと思います。
ラボタも子を持つ親として、「もし自分の子供が自閉症だったらどうだっただろうか?」であったり「隣近所に自閉症の方がいた時に子供にはどう説明し、どう付き合うのが良いだろうか」と考えながら見ていました。
自閉症の方々が自立して生活する施設と、その周辺に暮らす人々との軋轢。
第三者視点で見れば周囲に暮らす人々の寛容さを求めたいところですが、果たして自分が当事者になった時にはどうだろかとしみじみと考えさせられました。
和島 香太郎
和島 香太郎
加賀 まりこ
塚地 武雅
渡辺 いっけい
森口 瑤子
斎藤 汰鷹
石川 ハルミツ
「梅切らぬ馬鹿」は「梅はその枝葉の伸ばし方に応じて適切に剪定してあげないとちゃんと成長しない」という教えが転じ、「人もちゃんと環境や状況を整えてあげないと成長できない」という意味の言葉です。
本作では「自閉症」と「周囲の人々」との関わり合いの一部が描かれていましたが、そこからこのタイトルの意味をどう導き出すのかは、見る側に委ねられているような気がします。